Q1 生活保護4つの基本原理
- 生活保護法の目的(法1条)
- 生活保護は,生活に困窮するすべての国民に対して,最低限度の生活を保障するとともに自立を助長することを目的として,国が責任をもって行わなければなりません。
- 無差別平等(法2条)
- 国民は,要件を満たす限り,無差別平等に保護を受けることができます。
- 最低生活(法3条)
- 保護により保障される最低限度の生活は,健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければなりません。
- 保護の補足性(法4条)
- 保護を受けるについては,利用しうる資産,能力その他あらゆるものを活用することが要件となります。民法に定める扶養義務者の扶養は,保護に優先して行われます。(当協議会では不定期に電話相談会を開催しています)
Q2 生活保護4つの基本原則
- 申請保護の原則(法7条)
- 保護は申請に基づいて開始するのが原則です。急迫した状況にあるときは,申請がなくても,開始することがあります。
- 基準及び程度の原則(法8条)
- 保護の基準は最低限度の生活を維持できるように厚生労働大臣が定めます。
- 必要即応の原則(法9条)
- 保護は,それぞれの事情・必要性に応じて,有効かつ適切に行われます。
- 世帯単位の原則(法10条)
- 保護は,生計を一にする世帯全員の収入を基にその要否を判断されます。事情によっては個人を基準として判断されます。
Q3 最低限度の生活=最低生活費
収入認定額(勤労収入の場合は収入から必要経費を控除した額)が最低生活費に満たない場合に,差額が生活保護費となります(分かりやすくするために単純に説明しています)。
Q4 最低生活費の計算
- 生活扶助
- 個人としての生活費(食費等,第1類),世帯としての生活費(光熱費等,第2類),一定の場合に給付される加算額及び一時扶助費の合計が生活扶助となります。金額は,居住地・年齢・世帯員数等によって異なります。
世帯区分 | 第1類 | 第2類 | 合計 |
---|---|---|---|
標準3人世帯 33歳 29歳 4歳 |
38,460(35,750) 38,460(35,750) 25,160(27,880) |
50,890(55,030) | 152,970(138,012) |
平成25年8月から平成26年7月 (102,080+50,890)×2/3+(99,380×0.8350+55,030)×1/3=147,984 平成26年8月から平成27年7月 (102,080+50,890)×1/3+(99,380×0.8350+55,030)×2/3=142,998 |
|||
高齢者単身世帯 68歳 |
34,480(36,270) | 41,480(37,950) | 75,960(74,220) |
平成25年8月から平成26年7月 (34,480+41,480)×2/3+(36,270+37,950)×1/3=75,380 平成26年8月から平成27年7月 (34,480+41,480)×2/3+(36,270+37,950)×1/3=74,800 |
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高齢者夫婦世帯 72歳 68歳 |
31,120(31,470) 34,480(36,270) |
45,910(46,680) | 111,510(106,629) |
平成25年8月から平成26年7月 (65,600+45,910)×2/3+(67,740×0.8850+46,680)×1/3=109,883 平成26年8月から平成27年7月 (65,600+45,910)×1/3+(67,740×0.8850+46,680)×2/3=108,256 |
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一人親世帯 30歳 9歳 3歳 |
38,460(35,750) 32,540(31,990) 25,160(27,880) |
50,890(55,030) | 147,050(134,872) |
平成25年8月から平成26年7月 (96,160+50,890)×2/3+(95,620×0.8350+55,030)×1/3=142,990 平成26年8月から平成27年7月 (96,160+50,890)×1/3+(95,620×0.8350+55,030)×2/3=138,930 |
|||
- 住宅扶助
- 賃貸住宅の場合,家賃が住宅扶助になります。地域ごとに限度額がありますが,それ以上の家賃のところに住んではいけないということではなく,限度額を超える分は生活費の中からやりくりすることになります。
地域 | 単身世帯 | 2~6人世帯 | 7人以上世帯 |
---|---|---|---|
千葉県(1,2級地) | 46,000 | 59,800 | 71,800 |
千葉県(3級地) | 37,200 | 48,400 | 58,100 |
千葉市 | 45,000 | 59,000 | 71,000 |
この他に小中学校の児童がいる場合,医療機関にかかる場合,介護が必要な場合,出産の場合など一定の扶助費が給付されることがあります。。
Q5 収入認定額とは
勤労収入があったときは,そこから必要経費を差し引いて,残りが収入として認定されます。収入として認定された金額分は保護費から控除されますので,結果として必要経費として計算された分が手元に残ることになります。
たとえば勤労収入2万円のときは約1万円,勤労収入5万円のときは約1万5000円,勤労収入8万円のときは約2万円が必要経費となります。また高校生のアルバイトなど事情により最初から収入として計算しない場合もあります。
Q6 生活保護を受けるにはどうすればよいか
厚生労働省のサイトに詳しいので参照して下さい。とにかく福祉事務所で「申請」をしなければ始まりませんが,現実には「相談」として処理されることがありますので,窓口で以下のような発言があったときには参考にして下さい。
- 「働く能力のある人(65歳以下の人)には保護できません」
- →「働く能力」があることと「働く場所」があることは別問題です。求職活動の内容をメモしておくことが望まれます(何月何日に求人誌を見て株式会社○○に電話したが断られた,など)。
- 「住所がない人には保護できません」
- →生活保護は,保護を必要とする方の「居住地」または「現在地」において実施されます(法19条1項)。しかしながら定まった住所のない方が申請に行った場合,窓口職員から「施設」に入るように言われることが多くあります。窓口での指導に根拠も権限もありませんが,現実には施設に入所し,施設を居住地として申請をすることもあります。
*「施設」・・・社会福祉法2条3項8号(生計困難者のために,無料又は低額な料金で,簡易住宅を貸し付け,又は宿泊所その他の施設を利用させる事業)に定める無料低額宿泊所と呼ばれる施設。→東京都福祉保険局 - 「借金がある場合は保護できません」
- →これは全くの誤りです。ただし,生活保護費は生活のためのお金で借金の返済にまわすことはできませんから,生活保護の申請と同時に借金の整理をする必要があります(借金の整理を専門家に頼むと費用がかかりますが,分割に応じてくれるところはたくさんありますので,問い合わせてみてください)。
- 「不動産がある場合は保護できません」
- →これも誤りです。不動産は原則として保有を認められます(「住宅ローンを返済中の場合」と「世帯の中に65歳以上の方がいる場合」を除きます)。例外として「処分価値が利用価値に比して著しく大きいと認められる場合」に不動産の処分を求められることになります。ケースバイケースですが,処分価値が生活保護費の10年分を超えるかどうかが一つの目安になります。
「住宅ローンを返済中の場合」ですが,生活保護費から住宅ローンを返済することが原則として認められませんので,この場合には住宅を手放すことになります(ローンの残期間が短く金額も少ない場合は,生活保護費から住宅ローンを返済することが認められることもあります)。
「世帯の中に65歳以上の方がいる場合」には生活保護の前提として,社会福祉協議会の行う「要保護世帯向け不動産担保型生活資金」を利用しなければならなくなりました。いま住んでいる不動産を担保に借金をして,亡くなった後,相続人が借金を返済するか,不動産を処分するかを選択するというものです。亡くなるまでは住み続けていられますが,(相続人が借金を返済しなければ)亡くなった後に不動産を失うことになります。 - 「自動車を持っている場合は保護できません」
- →自動車は原則として保有は認めないというのが厚生労働省のスタンスですので,自動車が必要な場合は,その事情を丁寧に説明して例外的に保有を認めさせる必要があります。公共交通機関で充分に代替できるようなケースでは自動車の保有は困難でしょう。
なお,2010年5月に日本弁護士連合会が「生活保護における生活用品としての自動車保有に関する意見書」を出していますので参考にしてください。 - 「家賃が高すぎるので保護は受けられません」
- →これも誤りです。家賃が限度額を上回る場合には,その分が生活費に食い込んでしまいますので,生活保護開始後にもっと家賃の安いところに引っ越すように指導されることはあります。しかしながら家賃が高いという理由で申請ができないとすれば窓口職員の対応の誤りです。
Q7 どうしても申請させてくれない
窓口の職員が,正しい知識を持ち合わせていないことも考えられます。説明しても分かってもらえないこともあるでしょう。
生活保護の申請は所定の書式でなくても構いませんので,必要なことを書いた書面を「福祉に関する事務所」に内容証明で郵送することも可能ですし,第三者にアドバイスを求めたり,同行をしてもらうことも考えましょう。千葉県弁護士会が行う生活保護の専門相談などアドバイスをしてくれるところは各地にありますのでお近くの支援団体を探してみてください。